気候変動について(7)地球温暖化の「ハイエスタス」は終わったのか?

 1800年頃から世界の気温は小氷期を脱し上昇し始め、1970年代から1990年代まで加速度的に地球は温暖化してきた。その気温上昇が1998年頃から20年位頭打ちになっている。このことを二酸化炭素温暖化論者のあいだでは「ハイエタス(ギリシャ語)、ポーズ(英語)」(一時休止)と呼びあい、「温暖化が起こらなくなった原因は今のところ説明できない、われわれプロにして、こんなことができないとはお笑い草だな」(IPCC2、3、4次報告書・主筆トレンバース)とすら言っているのだ。そしてIPCC第一作業部会(自然科学的根拠)の報告書「政策者向け要約」に、「一時休止」の事実を説明できないために、気候モデルの結果が観測と合わないので、(気候モデルの)「最良の推定値」を掲げない、とこっそり脚注に小さく書くのみであった。

 二酸化炭素濃度は2016年には400ppmを超え、さらに増加し続けている。そのために各国政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成することを決定した。二酸化炭素は相変わらず指数関数的に増加しつつあり、IPCCによる長期変化傾向予測では加速度的に気温が上がることが示されている。二酸化炭素温暖化論者が「このままだと地球は火星のようになる」などという扇情的な危機煽りを行い、危機感に駆られた世界の市民の多くが地球の温暖化対策を各国の政府権力者に求めたからである。

 将来の温暖化予測は、その時点にならなければ検証できないが、この20年余りの地球温暖化の停滞、「ハイエイタス」は、その原因を特定することができるのではないか? 特定できなくても推定することは可能だ、と私は思う。

 事実、IPCC内部から1970年代からの急激な温暖化と2000年からのハイエスタスが内部変動によるものとして再現できた、という2つの論文が発表された。内部変動とは、太陽放射の変動や火山噴射のエアゾルなどの自然変動とは別の、流体の非線形的振る舞いの中で「ゆらぎ」として起きる自然変動の一つである。1970年代からの急激な温暖化と2000年からの「ハイエスタス」を引き起こした内部変動とは、大気海洋結合系による内部変動だそうである。これらの二つの論文の一つでは、1900年後半の内部変動による気温上昇は0.4℃であるという。同じ期間に「観測された気温上昇」は0.68℃であるので、二酸化炭素での気温上昇は0.28℃となる。観測値の正確性を考えると二酸化炭素での気温上昇はなきに等しい、と私は思う。なぜなら、各国から報告された「実測データーの不確定さが大きい」ことをICPPが2014年第5次報告で自認しているからである。各国から報告された「実測データー」は気球と衛星との実測データーと比べて高い、ということが指摘されていたことをICPPが認めざるを得なかったからである。そうすると気温上昇はほぼ自然変動の一つである内部変動なのかもしれない。ただ、この内部変動は、再び気温上昇を加速させる可能性は大きい。

 しかし、この二つの論文もいわゆる「コンピューターシュミレーション」なのである。1900年後半の気温上昇と2000年以降の「ハイエイタス」をコンピューターで「再現」できただけなのである。

 次に、私は太陽活動の考察をする。  地球の気温変化、二酸化炭素の変化のグラフは多数あるが、「1896年~2010年二酸化炭素、太陽活動と地球気温変化」という珍しいグラフがある。このグラフは、一見すると太陽活動の変化と気温変化が相関しているように見える。それは、さておき、このグラフから1987年頃から太陽活動が弱まっていることがわかる。

 IPCCによると、1978年から全太陽放射照度を衛星で測定しているデータを得て、もっぱら太陽11年周期に支配され1900年初頭はこの太陽11年周期が気温を増加させた可能性があるが、1970年以降の気温上昇は関係ないと結論している。さらに、IPCCは1986年から2008年まで、全太陽放射照度は僅かな減少トレンドがあった、という。果たして、この全太陽放射照度の減少トレンドが「温暖化のハイエスタス」に影響はないと言い切れるのだろうか、と私は疑問に思う。 これまで考察してきたことは、マウンダー極小期から現在までの全太陽放射照度の変化を0.1%程度とし、太陽11年周期程度の0.1℃の変化しかもたらさない、とするIPCCの見解を前提にした場合である。彼らは、1610年までさかのぼっての黒点数や極氷、木の年輪に記された放射性同位体から、推定して結論づけたという。この結論にもとづいて、かずかずの古気候学の指標を、改ざんしでっち上げたのがマンが作成した「ホッケースティック」型の気温温度変化のグラフである。 IPCCの科学者はあまりにも太陽活動の影響を過小評価している、と私は考えている。

 内部変動も太陽活動の気温上昇への効果は、人為的起源(二酸化炭素)の効果よりもはるかに少ないとするならば、「ハイエスタス」は何によるものなのか? 冒頭に示したようにIPCC内の二酸化炭素暖化論者が困り果てているのも当然だろう。

 太陽はこれまでの100年の極大期を終えて、現在は急激に弱まっている。最近の太陽研究によれば、既に太陽活動はダルトン期にはいった時とほぼ同じになっており、今後さらにマウンダー期のような太陽活動の極小期になるかもしれない、という。また、太陽の軌道運動の解析から2030年と2200年にマウンダー期に匹敵する極小期が到来すると予測している科学者もいる。

 私は、現在の「温暖化のハイエスタス」は太陽活動に起因したものだ、と推論する。  大気海洋結合系による内部変動が終わり、再び地球が温暖化するのか? ダルトン期程度の太陽活動の弱まりが続き「ハイエスタス」状態がしばらく続くのか? さらに太陽活動が弱まり、寒冷化するのか? 

 それらのどれでもあってもかかわりなく、資本家階級とその政府権力者は、労働者階級を犠牲にして「対策」を講じる。  

 現在、資本家階級とその政府権力者は、地球が温暖化しているととらえエネルギー問題に一面化し、2050年に向けてカーボンニュートラルを目指す政策を打ち出した。各国の諸独占体は、脱炭素社会を目指し新たな投資先を求めて競争を始めている。そのために石炭産業が真っ先に標的にされ、フランスで、アメリカで数多くの炭鉱労働者が解雇されている。石油産業も、電力産業や重電産業も、化学産業なども解雇攻撃が吹き荒れるであろう。

  私たち労働者は、このような首切り、解雇を跳ね返すために団結し闘ってゆこう。            2021.05.04  藤川一久 「気候変動について」終わり