トヨタアライアンスの崩壊

トヨタアライアンスの崩壊

 

 トヨタグループに加入している日野自動車ダイハツトヨタ自動織機の不正が続いている。

 連結子会社日野自動車は、エンジン排ガスや燃費性能のデーター改竄で、最大11万台の不正だという。極めて悪質である。そのため国土交通省は、不正があったエンジンを搭載した8車種について、「型式指定」を取り消す処分を行った(2022年3月29日)。このため、日野自動車は、「大量生産」ができなくなった。結果的に、国内で販売できる新車はほぼなくなった。さらには、これらのエンジンを搭載している、いすゞ自動車のバス、トヨタ自動車の一部にも影響が出ている。

 2023年にはトヨタ自動車の完全子会社であるダイハツが、ダイハツトヨタマツダ向けの3車種のエンジン「型式指定取り消し」の行政処分を受けた。型式指定申請における不正46車種の内、開発中の1車種を除く45車種が出荷停止した。(今年1月19日に5車種の出荷停止が解除された。)

 さらに、驚くべきことには、2023年3月以来、トヨタ自動織機が生産しているフォークリフト、建設機械用エンジンの認証(国内)での法規違反が発覚していた。そして新たに、フォークリフトエンジン6機種、建設機械用エンジン1機種、において排ガス規制違反、自動車用エンジン3種において、データー改竄が発覚した。

 これらは、明らかにジャストインタイムなどと言うトヨタ生産方式が破綻したということを示している。単なる「コンプライアンスの欠如」という問題に解消できる問題ではない。天皇豊田章男以下のトヨタ自動車を頂点としたトヨタグループ。豊田章男の価値観を絶対視する、「上位下達」の企業群、その各企業内での「ヒラメ社員」の増長、すなわち「上に物言えぬトヨタ文化」がマスコミにとりだたされている。子会社は強制的にトヨタ自動車がたてた納品スケジュールに従うしかなく、品質など二の次である、ということであろう。日野自動車のような不正が起きるのは必然的である。にもかかわらず、全責任を日野自動車にかぶせて、トヨタ自動車は、商用事業会社のCJPT(Commercial Japan Partnership Technologies)から日野自動車を追放した。その結果、トヨタ自動車が開発したCASE技術導入策が破綻したのである。トヨタアライアンスが崩壊した、というべき問題である。

 しかし、私たちは重要なことを、すなわち、本質的な問題があることを見落としてはならない。

 今、いや2020年以来エンジン車が全廃になる時代へ「秒読み」の時代であるということを。

 2050年にカーボンニュートラルを実現するという国際合意により、2050年までに温室効果ガス排出をゼロにするためには、2035年までにはエンジン車の販売を無くさなければならない。(自動車の寿命を15年と見積もている。)

 欧州、米国、中国がこぞってそのための政策を推し進めている(欧州がメルケル後のドイツ権力者の抵抗によって、二酸化炭素の排出がゼロとされる「合成燃料」の使用を条件としたエンジン車の販売を認めることを合意した)。

日本では、菅政権が2020年10月26日に2050年までに国内の温暖化ガス「実質ゼロ」方針を表明した。

トヨタ、日産、ホンダ、マツダも相次ぎ電気自動車、ハイブリット車、燃料電池車への開発へと動き始めた。

 それに歩調をあわせ、各自動車独占体とその傘下の諸企業群も、電気自動車の開発・販売を加速したのである。トヨタ自動車は、2020年代前半には、10種類以上の電気自動車を導入し、2025年頃には販売する全車種に電動車を展開し、グローバルには、エンジン車のみの車種の販売を止める方針である。

 これは、「技術の高度化が非常に進むなか、業務負荷が高まる」のに、「法規を尊寿しつつ、開発生産を進めるために必要な組織、体制の不備」が是正されなかったと、トヨタ自動織機は掲げているが、それを保証する資金がないのである。エンジン生産への予算が削られているからだ。しかも、トヨタ自動織機はトヨタ自動車から、やがては、不生産部門となるディーゼルエンジン事業の移管を強制されてきたのだ。そのことは、生産過程にある労働者に労働強化をもたらしてきたし、さらなる労働の強化を強いることになる。

 もうすぐ、エンジン車が販売停止となる、という世界的な状況のなかで、各自動車独占体は、その資金を電気自動車部門へ、その製品の技術開発、生産システムの開発、(生産ラインの)労働者の育成へとシフトしてきた、その結果エンジン部門の技術の劣化が露呈した、と言うことである。

全ての労働者は、一切の首切り、労働強化を許さず、闘おう!!

2024.02.11