2024年が明けた1月1日午後4時10分にM7.6、最大加速度2828ガル、最大震度7を記録した能登半島地震が石川県を襲った。この地域では、2020年ころから群発地震が起きており、2023年には珠洲市で震度6強の地震が起き相当な被害を被っていた。
今回の能登半島地震は珠洲市、震源の深さは10~16Kmで浅く、そのため珠洲市、輪島市、能登町、穴水町、志賀原発のある志賀町、七尾市などが激しく揺れた。
未知の断層が150Km(兵庫県南部地震=阪神・淡路大震災時の3倍もの長さ)も動いた・逆断層のズレである、という。そのズレは凄まじく、能登半島北岸約90Kmの範囲で、地盤が1分間で最大4m30㎝~4m40cmも隆起した。
さらに、4mを超す津波が陸地を駆け上がった。新潟県上越の関川河口付近では、6mを超えた。能登半島は、多くの建物が倒壊し、地くずれ、道路の陥没、亀裂などや土砂が川を塞いだり、液状化状態により1m以上の段差が発生した。そのために道路が寸断され、人々は避難ができずに孤立した。
震度6を記録した兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)は1995年1月17日であるが、2000年以降大地震が日本列島を襲っている。今世紀に入って日本列島は、「地震多発期」に入ったといえよう。以下に、大きな地震を列挙してみる。
・2003年
・2005年
・2007年
・2008年
4022ガルというギネスに登録される振れを記録した
・2009年
・2011年
東北地方太平洋沖地震 M9 最大震度7
宮城県沖地震 M7.2 最大震度6強 東北地方太平洋沖地震の余震
・2016年
本震 M7.3 1362ガル 最大震度7
・2018年
・2020年~
・2021年
宮城県沖地震 M6.9 最大震度5強 東北地方太平洋沖地震の余震
・2023年
・2024年
少なからぬ地震学者、地質学者によって、21世紀は「地震活動期に入った」と言われており、石橋克彦氏は『大地動乱の時代』と言っている。私もその通りである、と思う。
私たちは、いつどこで巨大な地震に襲われるかわからない。さしあたり、東海、東南海、南海トラフを震源とする、海溝型地震や、関東地震が近未来に起こると言われているが(中央防災会議、地震本部などの海溝型地震、活断層帯などの長期評価)。
しかし、問題はさらに次のことにある。
迫りくる原発震災の危険性
今回の能登半島地震で考えるべき重要な問題は、震源域に原発がなかったこと、震源から70Km離れた志賀原発が停止中であったことである。震源地のあった珠洲市は、住民の反対運動で原発の誘致・建設を拒否した、その結果として原発がなかったことが大きく幸いした。
もし住民運動が敗北し、珠洲原発があったら、当然にも大爆発、炉心溶融は必至であったろう。原発から漏れ出た放射能で、避難ができない人々は大量に被曝したであろうことはすぐに判る。能登半島地震の規模、被害の甚大さは想像を絶する。6000年に一度ともいわれている地盤隆起。兵庫県南部地震の3倍もの長さの断層が動き、それが未知の断層であったのである。このことは、地震調査研究本部の「活断層の長期評価」や中央防災会議などの水準・限界を端的に示している。現在の「科学」では甚大な地震を引き起こす「活断層」を見つけ出すことはほぼ困難である、ということだ。
志賀原発でも相当のダメージを受けた。原子炉建屋の基礎部分で、1号機は957(想定918)ガル、2号機は871(想定846)を観測した。ともに想定している地震動をうわまった。運転中であったなら、緊急停止ができていたかどうか。また、変圧器が破損し、外部電源5回線の内2回線が使えなくなった。海側の物揚場の舗装部が沈下し、最大35cmの段差が生じている。
驚くことに、2023年3月に規制員会は志賀原発の敷地内の断層は10年前の判断とは逆に「活断層」ではないと認めたばかりであった。巨大地震の発生の可能性を調査している「地震調査研究本部」ですら「未知の断層」と言っているばかりか、原発を稼働するために活断層を過小評価したり、「ない」ものと報告してきた電力会社のお抱えの御用学者の見解などで原発を再稼働してはならない。
先に示した2000年以降の大きな地震で、2003年宮城県沖地震では東北電力女川原発が、2007年能登半島地震では志賀原発が、想定を超えた揺れを記録している。さらに同年中越沖地震で東京電力柏崎・刈羽原発では想定を3.8倍も超す震度7相当の揺れがあった。
九州電力玄海原発、川内原発、中国電力島根原発、四国電力伊方原発、北海道電力泊原発など、分かっている活断層が原発のすぐ近くにある。関西電力の活断層の巣である若狭湾に並ぶ、敦賀、美浜、大飯、高浜の原発群。東海地震の震源域の上に立つ浜岡原発。これら日本の原発はどれ一つをとっても、地震・火山による、地震動・地殻変動に耐えられるわけがない。
2023年岸田政権は、「GX推進法」に引き続いて「GX脱炭素電源法」を成立させた。言うまでもなく、この法律は福島第一原発事故以降の「原発依存から脱却」する政策から「原発依存への転換」「原発回帰」をその目的にしたものである。
それは、‶危険極まりない原発〟に依存してまで、日本が原発・核開発の大転換をおこなう、ということを国家の戦略目標に据えたことを意味する。現実的には、40年の稼働を超えた老朽原発を、とにかく(20年間)再稼働させるものである。いまや、日本列島は、老朽原発に大地震が襲う、こういう時代になったことを能登半島地震は示したのである。
原発震災から私たちが逃れ得るとしたら、それは、一刻も早くすべての原発の稼働を停止し、廃炉へと向かうしかない。
2024.01.21