【54】孤立するイスラエル・ネタニヤフの悪あがき

孤立するイスラエル・ネタニヤフの悪あがき

 

 シオニスト・ネタニヤフのイスラエル軍は、ハマス最高指導者シンワルを殺害した10月16日以降も嵩にかかって空爆・地上戦を敢行している。「ハマスの徹底抗戦を壊滅する」、と称して大量の民間人、特に子供たちや女性たちを虐殺し続けている。そればかりではない。9月28日にはヒズボラ最高指導者ナスララ、およびヒズボラの軍事精鋭部隊や革命防衛隊幹部らを空爆で殺害するのみならず、レバノンに軍事侵略し南部ナバティエ市庁舎を襲撃、市長以下6人を殺害した。また、国連レバノン暫定軍を2度にわたって襲撃するばかりかレバノン金融機関への爆撃すら行っているのだ。

 そもそもレバノン南部には国連安全保障理事会決議によって、レバノン軍と国連レバノン暫定軍以外は展開してはならないという決議があるにもかかわらず。

 ガザにおいては、次々と民間人が虐殺されている。とうとうBBCによって生きたまま焼かれる人間の映像が全世界に放映され、イスラエルの残虐なジェノサイドに対する怒りが全世界で沸騰しているのだ。国連人道問題調整事務所は声明を出し、「ガザ地区は実際に人々が行くことができる安全な場所がない」と訴えている。

 このような、国連決議、国際法を無視した虐殺と破壊行為は、孤立するイスラエル・ネタニヤフの焦りが滲みでた悪あがきである、と私は断じざるを得ない。

 

2024年9月の国連総会

 

 シオニスト・ネタニヤフが国連総会で演説した。演説を開始し始めると、出席していた各国の代表が、イスラエルへの抗議のため次々と退席した。

 さらに、スロベニア・ゴロフ首相は「ネタニヤフ首相、今すぐ戦争を止めろ」と怒りを込めて発言し会場から大きな拍手が沸き起こった。また、パキスタン・シャリフ首相は「パレスチナの無実の人たちへの組織的な虐殺だ」と痛烈な批判を浴びせた。さらに、パレスチナ自治政府アッバス議長は「イスラエルはガザ全体を再び占領し、ほぼ完全に破壊した。ガザはもはや居住に適さない場所になった」「国際社会は直ちに制裁を科さなければならない」「国連決議に従わないイスラエルは加盟国としてふさわしくない」とも訴えたのである。

 他方ネタニヤフは、「善が悪として、悪が善として描かれている」と各国首脳の演説を一蹴し、「この戦争はもう終わりにできる。ハマスが降伏し、武器を捨て人質を全員解放すればいいだけだ」、と居直り「完全な勝利を収めるまで戦う」、との決意を示した。

 過去におけるイスラエルの数々の蛮行を国連総会での演説において、「反ユダヤ主義」「テロとの戦い」を引き合いに出して議場を黙らせてきたのがネタニヤフであったが、今回の「パレスチナ人虐殺」「レバノンのガザ化」という事態を目の当たりにした、ドイツを除く、各国権力者の多くには通じなかった。

 

各国権力者の対応

 

・ドイツ

 アメリカに次いで30%もの軍事援助を行っているドイツでは、既に昨年10月にパレスチナ連帯デモは「反ユダヤ主義」になりやすい、と各地で行政裁判所略式手続きで禁止されている。また、警察の判断でデモを解散できるとして、パレスチナ連帯デモに対し徹底的な弾圧を行っている。このような暴力的な弾圧に対して「まるでナチスのようだ」という批判が吹き上がっている。それはまた、「すべてのドイツ国民は、事前の通知や許可なしに、平和的に非武装で集会する権利を有する」というドイツ基本法第8条第1項という精神の否定でもある。

 それはドイツ権力者の次のような考え、認識に規定されているのだ。

ドイツ首相・シュルツは、「イスラエルは国際人道法を遵守している」「イスラエルへの批判は馬鹿げている。同国は国際法に則っている」などともはや妄言としか言いようがないことを言っているのだ。

 緑の党の党員であるアンナレーナ・ベアボック外相は、「ハマスはテロリスト」であり、テロリストが病院などに立てこもったら、「それは攻撃対象」とする。これは「ドイツの理念である」、とあからさまに言ってのけている。

 ちなみに、このようなドイツに入国を拒否されたグレダ・トゥーンベリはこのようなドイツ政府に抗議するよう呼び掛けている。(彼女は現在のイスラエルの虐殺に抗議するのは、人間としてあたりまえなのであって「反ユダヤ主義」でも何でもない、という主張を展開している。)

 

・フランス

 国内にユダヤ人居住区をかかえ、かつシオニストに同調する部分の反発をも無視し、フランス大統領・マクロンは1947年11月国連総会での「2国家分割決議」に言及し、「ネタニヤフ氏は、自国が国連の決定に基づき建国されたことを忘れてはならない」「今は国連の決定を無視している場合ではない」と閣議で話した、という。これに先立ってマクロン大統領は、「パレスチナ自治区ガザ地区での紛争を止めるには同地区で使用する武器を禁輸するいがいにない」という政府決定に従い、11月からの海洋防衛見本市「ユーロバナル」の主催者はイスラエルのブース設置や装備品の展示を認めない、と発表した。

 当然のごとく、ネタニヤフ首相は1948年のホロコーストの生き残りたちによる「独立戦争(第1次中東戦争)」での勝利の結果だ」と猛反発。ガラント国防相は「イスラエルが戦争している敵を助けるだけだ」「われわれはフランスの支持の有無にかかわらず、7つの戦線で敵から祖国を防衛し、未来のために戦い続ける」と主張した。

 

アメリ

 「ガザ援助改善なければ軍事支援の一部を停止する」と国務長官・ブリンケンと国防長官・オ―スチィンは警告を発した。しかし、「ガザ援助の改善」の検証できるのは大統領選の後である。

 

EU

 欧州連合EU)と湾岸協力会議は、当事者に即時停戦を求める「共同声明」を採択した。また、「国連の任務に対する全ての攻撃を非難する」という文言も盛り込んだ。

欧州委員会オーストリアユダヤ系議員が「戦争犯罪を犯すロシアを制裁したのは正しい。だがイスラエルはいつ制裁するのだ? フォン・デア・ライエン委員長、あなたは綺麗にこの質問に答えるのを避けてきたが、EUはいつイスラエルに制裁を行うのですか」と批判している。

 アイルランドとスペインは「イスラエルとの自由貿易協定を停止するよう」欧州連合諸国に求めた。

 また、スペイン・サンチェス首相は、すべての国に対し「イスラエルへの武器販売に対する国際的な禁輸処置を課すよう」求めた。

 

全世界に広がる反戦闘争

 先に述べたドイツで、国家権力の凄まじい弾圧にめげず、労働者・人民は「パレスチナに自由を」という旗を掲げて集会デモを繰り返している。ロンドン、パリ、ローマ他ヨーロッパ各地で大規模な「ガザ反戦デモ」が行われている。参加した労働者・人民は、イスラエルの攻撃や米国、自国のイスラエルへの支援を批判し「ガザから、レバノンから、中東から手を引け!」「パレスチナに自由を」という声を挙げ、闘っている。

 さらに、「虐殺にユダヤの名を使うな」といスローガンのもとアメリカを中心にユダヤの人々が繰り返し抗議の声をあげている。そして「X」に約27万人のフォロワーを持つ反シオニズムユダヤ人団体「トーラー・ジュディイズム」は「イスラエルナチス国家」、「ネタニヤフは現代のヒトラー」だなどと痛烈な批判を「X」に投稿し続けている。

 イスラエル本国において、すでに私のブログで紹介しいるように、敬虔なユダヤ教徒や兵役を拒否している青年を含む多くのイスラエル国民が「戦争」に反対しているのである。そして9月1日には、ネタニヤフ政権に対して全国で70万人の反政府デモを行い、労働組合は全土でストを敢行した。

 

文字通りイスラエルシオニスト・ネタニヤフ政権は全世界からの労働者・人民の抗議の声に包囲されているのだ。

 

追いつめられたシオニスト・ネタニヤフのイスラエル

 

 イスラエルによるガザでの虐殺の数々。生きたまま焼かれている人間の様子がBBCで放映され、その映像の一部が「X」による投稿で世界中に流された。その「むごたらしい」(アメリホワイトハウス国家安全保障会議)鬼畜のごとき蛮行が、全世界に知れ渡ったのである。ガザ地区での死者は42000人を超え、アメリカ帝国主義をはじめとする、ドイツ、イギリスなどの一部の帝国主義権力者とシオニスト以外の全世界の労働者・人民の怒りは極点に達している。

 「敵の領土において短期決戦で決定的勝利を収める」というイスラエル建国以来の軍事戦略は既に破綻している、と言える。この軍事戦略の前提をなす「鉄壁防御」が何度も風穴をあけられているのだからである。昨年の10月7日のハマスの「奇襲攻撃」の際にハマスが放った数千発のロケット砲は、ことごとくイスラエルの「多重防空網」をすり抜けた。ヒズボラは毎日、ドローンとロケット砲でイスラエル北部を攻撃しており、今月14日にはハイファー帯が攻撃され、イスラエル兵4人が死亡し60人が負傷している。さらに今年4月のイランのミサイルとドローンの攻撃は、イランは「事前通告」し、アメリカ、ヨルダンの対応にもかかわらず、数発のミサイルが軍事基地周辺に着弾した。そして、イランの通告なし(アメリカは察知しイスラエルと連携していた)での180発の弾道ミサイルの攻撃では、ネバティム空軍基地の格納庫が破壊され、モサド本部近くも被害に遭った。このように、アイアンドームを含めた多重防空網は穴だらけであったのである。

 それ故アメリカは終末高高度防衛ミサイル(THAAD)システムを提供せざるを得ない事態となった。

 イスラエルは、レバノンを第2のガザとし、既に1200人以上の民間人をすでに虐殺している。にもかかわらず、ヒズボラのミサイル攻撃が激しさを増している。

 イスラエルのジェノサイドは、ミサイル防空システムなどの軍事的な脆弱性にも規定されているのだ。

 そもそもアメリカ、イギリスの支持と支援、ソ連スターリンの裏切りによって建国したのがイスラエル帝国主義なのであり、シオニズムイデオロギーと一体の人種主義的差別を特色とした民族主義的国家として建国されたのがイスラエル国家なのである。その国家が、「入植者植民地主義(セトラー・コロニアル)国家」とでもいえる諸施策を行ってきたのである。それゆえ、ユダヤ民族主義シオニストたちが建国したイスラエル国家は、自国の周囲に存するイスラム教国家・アラブ民族主義国家からの政治的・軍事的脅威に常にさらされているのである。とりわけ、パレスチナ人民からの「入植者植民地主義」に対する「解放闘争」を根絶やしにしなければ自分たちは生き残れない、という強迫観念に追い立てられているのである。このようなイスラエル国家、シオニスト・ネタニヤフ政権がパレスチナ人民へのジェノサイドを通じた「民族浄化」のための戦争が今行われているのだ。

 

 

 シオニスト・ネタニヤフ政権のパレスチナレバノンへのジェノサイドを許してはならない!

 

 全世界の労働者・人民は団結し、シオニスト・ネタニヤフ政権の打倒を目指し、アメリカ・ドイツのイスラエルへの「政治的、経済的、軍事的支援」を許さない闘いを創りだそう!

 私たちは、国家的分断と人種主義的、民族主義的的・宗教的な対立、それらの政治的=ブルジョワ的解決の限界を自覚し、これをのりこえてゆく共産主義による「人間の人間的解放」を目指す「母体」を創りだしてゆかねばならない。

 

     2024.10.17